すぐそこの無縁家族

その家族。両親と夫婦とこども3人の構成は我が家とまったく同じであった。うちの長男が一番下の娘とは同級生とあって、PTAでもずいぶんと長い付き合いであった。盲目のじいさんと、青島幸男からいじわるを取ったようなばあさんであった。

 

▼奥さんがこども3人を連れて家をでたのが4、5年前であった。どこかに一軒家を建て、暮らしているとうわさで聞いた。家は主人と両親の3人住まいとなった。屋根がはがれ、障子がやぶれっぱなしだ。外からみても、だんだんと家のようすが荒れてきたのがわかった。

 

▼しばらくすると、じいさんが亡くなった。そのまた1年以内に、ばあさんが追いかけるように亡くなっていった。いつ弔ったのか、どこで供養したのかまったくわからなかった。主人はひとりとなった。気はいのない家というのは、あたたかさとか、温もりとかというものを寄せ付けない。

 

▼いつしかご近所も連絡がつかなくなった。実の弟が音信をたしかめようと、電話をするがつながらない。気を揉んで実家をたずねていった。あわてて119番したが、手遅れだったらしい。救急車は音をださずに帰って行った。死後2週間くらいがたっていた。

 

【…つづく】

 

【その1】【その2】【その3】