フランス料理

 同級生Y君は、若いころフランスで2年間修行したホテルマンである。フランス料理への理解も深い。ミシュランガイドという冊子がある。日本での紹介は一つ星とか三ツ星レストランとかいっているが、あれは正確には「アンマカロン」「ドゥマカロン」「トロワマカロン」というのだそうだ。たしかに冊子を見ると、ランクを示す絵柄は、マカロンがその数だけ書いてある。

 ある日、同級生Oさんとランチをしようということになった。受けたはいいが、まさか会った後、捜し当てた店にふらっと入り「たぬきうどん定食コーヒー付き」を頼むわけにはいかない。土地勘はないし、井之頭五郎のようにうまい食堂を引当てる感覚はゼロである。ということでレストランにランチを予約した。ただ、どうもフランス料理店らしかった。

 フランス料理のイメージは、【ワインとシャンパン・丸く白い皿・用途のわからない無数のカトラリー・素材が正体不明となった一品・覚えきれない取決めごと】だ。店の前に到着すると、雰囲気ははもうそれを醸し出している。入る前からギブアップ状態で「たぶんいっぱいいっぱいだから、だめだったらたすけてくれ」とお願いするありさまであった。

 会話に神経が集中していたせいもあって、所作などたぶんでたらめだったと思う。メニューもほとんど覚えていないし、味も推して知るべしである。「箸ください」を言わなかっただけ「よくできました」である。