スピードラーニング
飽きっぽさが特技の高校生の娘。英語を勉強するから石川寮のスピードラーニングを買ってくれといってきた。小学校4年の時、剣道がやりたいとせがみ、泣く泣く胴着と竹刀を大金で揃えたにもかかわらず、3回でやめてしまった娘である。最初は頭ごなしに「どうせ続かんだろ」と否定してみたものの「子供の才能はどこで開花するかわからない。」と親バカ親父は3ヶ月間申し込んでみた。二人ともipodに入れ、娘はバスの中で、私は車に接続し、聞き流しを開始。さあ、3ヶ月後が楽しみだ。
しばらくしたある日、知り合いの旅行会社社長からある青年を紹介された。AK君はフィジーから来た青年、フィジアンである。長岡技術科学大学を卒業後、地元に工場がある企業に就職し、今や日本に帰化してしまった。フィジアンが見て感じた日本ということで、AK君を講師として朝の勉強会があり、その朝食会でのこと。AK君は地元の言葉(もしかしたら自国語)+英語+日本語を話せることが話題となった。ある女性が「英語話せてすごいですねえ」と10人ほどいた席で誉めてみせた。たしかに、日本語も話せるのだから語学力はそうとうなものだ。現在は会社の要請で中国語もマスター中で、その努力もたいしたものだと感心する。
しかしである。彼がなぜ英語をしゃべれるかと言えば、それは英語で教育を受けたからである。世界に言語がいくつあるか私は知らないが、ものすごい数になるのではないか。方言もいれるとたぶん数えきることは不可能だと思う。そんな中、自国語で初等教育から高等教育まですべて自分が育った母国語で学べる国がいくつあるのだろうか。彼の国は自分が生まれたときから話している言葉では教育ができず、やむを得ず次善策として英語教育を施しているのである。こと高等教育になればなるほど自国語による教育はむずかしくなる。
それに比べ日本語で初等教育から大学までの高等教育全てを受けることができる日本は大変アドバンテージの高い国だといえる。以前NHKラヂオで放送していたのは、日本語による翻訳技術についてであった。他国から来て日本語を学ぶと、世界中の書物を読むことができ、大変役にたっているというのである。
アメリカや海外への留学者数が減少しているので、たいへんだ!とマスコミは何とかしろと騒いでいるが、国別の留学者数を見てみると1位から11位までカナダ・メキシコを除き(隣ですから)非欧米で、ダントツ多いのが中国(13万人弱)である。あれだけ多くのノーベル賞受賞者を出している、イギリス・ドイツなどは8千人を超える程度で、中国やインドの足元にもおよばない。8千人というと国費などである程度訳ありなエリートが派遣されているのではないかと想像する。つまり、ヨーロッパ先進国は母国語教育が高等教育に至るまで成り立っており、アメリカにわざわざ留学しないのである。ノーベル賞だけみると、受賞者の多い国で、留学生を多く送り込んでいるのは日本くらい(2万5千人弱、世界6位)である。アジアの国々がまったくと言っていいほどノーベル賞を受賞できない現実は、間違いなく使用言語に関係しているのではないか。マスコミは、ノーベル賞の数とアメリカ留学者数は反比例している現実をどう受け止め説明するつもりか。
世界のほとんど多くの人々は、高等教育を受けたければ自国語でなく、まず英語をマスターしなければならない苦悩を日本人はまったくというほど理解していない。
遺伝を発作した娘。英語が話せることは自慢でもなんでもないと、親バカ親父はなぐさめて見せるのである。