5寸勾配の切妻屋根、JR原宿駅が見えるはずだった。
東京メトロ明治神宮前をおり、表参道のゆるい坂道を神宮橋まで歩いてゆく。左手に国立代々木競技場が見える。吊り屋根の美しい曲線は、1964年から60年近く経っても、全く古さを感じさせない。そして右手には5寸勾配の切妻屋根、JR原宿駅が見えるはずだった。
▼高校3年の秋、姉をたずねて遊びに来たことがあった。どこへ行ったか覚えていないが「原宿駅は小さいなあ」と思ったことと、喫茶店でコーヒーを飲んだことだけ残っている。歌の作詞に表参道という言葉もよく使われていた。田舎の青年は「表参道」が地名だと思っていた。
▼記憶にのこる建物は屋根がいい。日本の顔東京駅は、一文字葺きという葺き方を駆使し、天然スレートで堂々威容を誇っている。三島駅は後ろに富士山をしたがえ、景観を活かして、稜線を合わせるように反りが付けられていた。
▼明治神宮の参拝を終え、新駅舎にはいると移転・解体作業がよくみえた。ずいぶんと反対運動もあったらしいが、願いは叶わず、かなしいくらい残念である。すこしでも以前の形を再現し、田舎の青年にも思い出として残るようにしてほしい。
● 旧JR原宿駅
● 東京駅
● 三島駅