なんまいだ、なんまいだ。
めいのゆめちゃんと健太くんは、昨年結婚した。しばらくして、東京からわざわざ挨拶にきてくれた。じいさんもその時は健在で、久々に顔をみせてくれた可愛い孫むすめを大歓迎したのだった。はじめて会うゆめちゃんの夫は、見るからに好青年で、さぞかし安心したことだろう。
▼ じいさんが入院した病院では、姉のスマホとゆめちゃんをつないで、画面越しにお見舞いをしてくれた。なんどか「じいちゃん、じいちゃん、ゆめこだよ」と呼びかけるも返事はない。聞こえているのだろうが、すでに返す余力は尽きていた。じいさんが息をひきとる直前、たぶん10分前くらいだったとおもう。
▼ 四十九日が終わりひと段落がついたころ、仕事の都合で参加できなかったゆめちゃんと健太くんが、墓参りにきてくれた。忙しい中来てくれたふたりをみて、よほど嬉しかったのだろう。その墓を飛び出し、じいさんは二人と一緒に新幹線に乗ったらしい。
▼ ある日。未明3時ころ。突然大声で健太くんがうなりだした。びっくりしてゆめちゃんが起きると、目つき、顔つき、声の調子がいつもとまったく違った健太くんがいた。そしてやおら語りだしたのである。「墓まいりに来る時は、花をもってこい」「死ぬ時は痛くてせつなかった」「ふたりで元気でなかよく暮らせ」「あの世は兄弟がおおぜいいるからさみしくねえ」なのだとか。
合掌