秘湯駒の湯


春の越後駒ケ岳が見たくて「駒の湯」へ行ってきた。枝折峠の入り口をやり過ぎ、深く切り込んだ沢が見えると、そこが、駒ケ岳の登山口で、きゃしゃな橋を渡ったところが駒の湯温泉である。小さいがこざっぱりとし、湯量も申し分ない山奥の秘湯である。ぬるめの温質で、外湯に女風呂と混浴がある。

 

▼ 帰宅し昼食を食べたあと、映画「浮雲」をみた。高峰秀子主演、成瀬巳喜男監督の名作といわれている。製作は1955年であるから、もう60年以上も前の作品である。モノトーンはもちろん、今にない演出がやけに新鮮で、興味をそそった。

 

▼ とにかく、常にだれかがタバコを吸っている。同時代の外国映画も、紫煙は大事な小道具として重宝されている。もうひとつが、共同浴場のシーンである。伊香保温泉で主人公の富岡兼吾は、おせい、ゆき子の浮気相手と、それぞれ一緒に温泉に入る。だが、恥じらうでもなし、情事に至るでもない。湯船から脱衣室へ、淡々とシーンは流れていくのである。

 

▼ 当時のそのままを映画は教えてくれる。いい悪いではない、どちらもそれが「ふつー」だったのだろう。常識はゆっくりゆっくり静かに変わって、現代の非常識になっている。気がつけば平成もあとわずか。もちろん駒の湯の混浴に女性はいなかった。